ボーイング社の新型機(787)に東レの炭素繊維強化プラスチック(CFRP : Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)が採用され、軽量化・強度強化に貢献しているが、アメリカにZoltek社という同じくCFRPで頑張っている会社があるので、簡単に紹介する。
- 概要
- 1975年設立で、本社はセントルイス市、1992年にNasdaqに上場
- CFRPのうちでも産業用で比較的安価で今後需要が急激に伸びると思われる「ラージトウ」に力を入れており、その生産量は年間約8,700トン(2010年)。
- 「ラージトウ」に於ける世界シェアの約30%を占めトップである(なお、東レや他の日本メーカーは航空機機体やスポーツ用品向けの「レギュラートウ」の生産が多い。東レは両方生産しているが、ラージトウの生産量は約300トンにとどまる)。
- 売上の77%は炭素繊維関連。残りはアクリル系ファイバー等で、耐熱素材や飛行機のブレーキ素材に使われる。
- 1988 年より炭素繊維事業を開始し、Panexというブランド名にて連続繊維、チョップド、ミルド、織物、プリプレグなど様々な形態で炭素繊維を供給している。また、機能繊維としてPyronというブランド名の耐熱性に優れた繊維(アクリル系)の販売を行っており、航空機ブレーキや不燃性が求められる部位等に使用されている。
- 自動車分野においてはドイツのBMWや米国のゼネラルモーターズなどに炭素繊維を供給しており、その他にも、オイル・ガス掘削設備などの土木分野にも用途展開を進めている。
- 風力発電に注力
- 同社は、炭素繊維の風力発電ブレードへの適用に積極的であり、デンマークの Wind Systems A.S.と近接な関係を築いている。
- 年間約8,700トンのCFRPの出荷のうち4,000トン(累計で20,000トン、2010年)を風力発電用風車(タービン)メーカーに販売。
- もともとは炭素繊維の製品を扱っていなかったが、1988年にStarckpole Carbon社を買収し一気に炭素繊維の技術、人材、製造能力を手に入れた。その後暫くは方向が定まらなかったが、1992年ごろに日本メーカーのあまり力を入れていないラージトウの製品開発に力を注ぐ方針を定め、R&Dに力を入れ、1998年に低価格で高品質の製品をマーケットに出せる様になった。
- 航空機(機体)向けやスポーツ用品向けの、高価であるが数が出ない炭素繊維製品(レギュラートウ)は思い切って止めた。ただし、航空機用のブレーキ製品には力を入れている。
- 2002年頃から伸びだした風力発電用の材料開発に注力し、その大きなマーケットである欧州に力を入れた。欧州向けを想定し、製造コストの安いハンガリーに工場を建設した。その後、アメリカマーケット向けにメキシコにも工場を建設。
- それまで羽根(Blade)にはガラス繊維強化プラスチックが使われる事が多かったが、重量が25%~35%減る事、強度が強くなる事、値段が大きくは上がらない事で大手の顧客(特にVestas、Gamesa)に食い込む事が出来た。
- 風車の羽根(Blade)製造メーカー向けに、糸状の炭素繊維だけではなく、布状に織った製品(Fabrics)、それを樹脂に浸潤した製品(Prepreg)、それを更に引き抜き成型した製品等、色々な形態・性能の製品を用意し、Bladeメーカーの要求にあわせて出荷出来る体制を整えた。