テキサス州に於ける風力発電状況

これも、自分の為のメモです。環境省が2012年12月にERCOTと面談したときの資料(報告書)を参考にしています。

  • 「ERCOT」
    • Electric Reliability Council of Texas(テキサス電気信頼性評議会)の略
    • テキサス州およびその近辺をテリトリーとするRTO
    • 顧客数:23,000,000
    • 総配電網距離:40,500 miles(テキサス州の85%)
    • 管轄内の発電所数:550個所
    • 発電ミックス:天然ガス:40%、石炭:40%、原子力発電:10%、 風力発電:10%
  • 予備発電の制度
    • ERCOT は、「ノン・スピニングリザーブ」と呼ばれる予備発電の制度を導入している。
    • 同制度では、「普段は稼働していないが、必要になった際に 30 分以内で起動すること が条件とされる予備発電」の確保を発電事業者に求めている。
    • これらは通常、天然ガス による発電施設である。しかし、風力発電容量が 15GW に達した場合、ノン・ スピニングリザーブ10 分以内に起動出来るような制度が必要となる。
    • つまり、現状の風力発電比率 10%のレベルであれば、予備発電は 30 分以内の起動で対応できる が、これが仮にピーク時の電力需要の 20%の電力を供給する場合、10 分以内の起動 が必要となる。
    • アンシラリーサービスを増強するために、ERCOT ではノンスピニングリザーブの量を増量してきたが、起動時間を既存の 30分から10 分以内に短縮する制度の改正は行われていない。
    • 古いスチーム型のシステムを除いて、ガスタービンシステムの多くは5分以内の起動が可能である。つまり、技術的には不可能ではない。
    • 起動時間を短縮する為には、ERCOT が発電所制度としてより短時間での起動を義務化する必要がある。
    • 稼働中(オンライン)の設備により補填することも可能である。

  • 送電混雑解消を目的としたCREZプロジェクト
    • ERCOTでは数年前に、風況にかかる大規模な調査のもと、「Competitive Renewable Energy Zone (CREZ)」を特定した(上図で色の付いている西部のエリア)。
    • 同調査は、テキサス州西部における強風を効果的に活用するために実施した。
    • この結果に基づいて、約7,000,000,000ドルをかけた送電線インフラの改善に向けた大規模なプロジェクトを実施中である。
    • 同プロジェクトは、風力発電で生産された18GWの電力を テキサス州西部から東部の都市部に送電することを目的としている。
    • 既存のERCOTの送電容量は約9GWであるため、これを倍増させることとなる。
    • 同プロジェクトは、2013 年末に完了する予定である。
  • 安定性
    • テキサス州西部で発電された大量の風力発電の電力を、東部の都市部までの長距離を送電する際に生じる周波数の変化のため、安定性の問題が付きまとう。
    • 上記の調査の結果、ERCOTでは風力発電容量が約15GW(ERCOTにおけるピーク時の需要の約20%に相当)に到達すると、「アンシラリーサービスによる補填が必要となる」ことが判明。
    • この際に必要となるのが、安定性の分析(Stability Analysis)である。
    • このため ERCOTは最近、リアルタイムで安定性の分析を行う取り組みを始めた。これまで ERCOT ではリア ルタイムのデータを用いてこなかったため、保守的な分析をせざるを得ず、送電上限を必要以上に低く設定するといったエラーが生じていた。
    • しかし最近では、リアルタ イムの分析を行うことにより、より実際の状況が反映された正確な予測が可能となった。これにより、送電容量にして約300~400MWの増量に成功した。
  • 送電混雑
    • 送電混雑を避けるためには、「風力発電の出力抑制(dispatch wind down)」を行う必要があり、このためにも、風力発電の予測は必要不可欠である。
    • ERCOTではこの風力発電と負荷の両方の予測を重要視している。
    • このため ERCOTでは、各風力発電ファームに対して、5分毎に気象情報を提供することを義務化している。
    • これにより、さらに正確な風力発電の予測が可能となる。
    • また気象情報に加えて、タービンの稼働状況、各発電所のメンテナンス状況等の運用計画(Current Operating Plan)の報 告も義務付けている。
    • これにより、特に翌日の運営状況の把握に注力しつつ、先7日間に亘る運用状況を把握することで、正確、かつ無駄のない供給バランスの維持が実現する。
  • 送電網整備と予測精度向上の効果
    • 風力発電の出力抑制(dispatch wind down)」は、過去数年の間に減少傾向にある。(以前は頻繁にあった)
    • これは、ERCOT が送電線の整備を進め、送電混雑のポイント(congestion point)の削減に努めてきたことが理由のひとつである。
  • テキサス西部の風力発電地帯
    • テキサス州では、メキシコ湾から吹く風と州西部から吹く風の特質が異なるため、(各地域に複数の風力発電施設を運用することによる)「ならし効果」がある程度得られている。
    • CREZ の大部分はテキサス州西部に位置している。
    • テキサス州西部の殆どは砂漠であるため、同州東部と比較して土地の価値が低い。
    • このため、立地を巡る問題も生じていない。
    • さらに、テキサス州西部は風力発電施設により経済的恩恵を受けているた め、地元住民も風力発電を好意的に受け止めている。
    • 一方で、都市部であるテキサス 州東部に近づくに伴い、立地等への反対意見が目立つ傾向にある。
    • 風力発電が盛んなテキサス州西部においては、主な経済効果は風力発電によりもたら されるため、発電施設の建設終了後の経済効果も期待できる。
    • 例えば、風力タービン が建設された土地の所有者は借地料(Royalty Fee)として風力タービン一基につき年間 4,000 ドル程度の収入を得ている。広大な土地所有者の場合、高額な収入を得ることが出来る。