ところで、「NEDO再生可能エネルギー技術白書」は、とても良く書けている。勉強になる事が多い。
この辺りを勉強したい人は是非ご一読を。
特に、「 第 9 章 系統サポート技術」の「ガス火力発電施設」の下記の記述は勉強になった。
- 火力発電では、出力変化率が大きく発電効率も高いコンバインドサイクル発電が、再生可能エネルギー電源の出力変動対応用として世界的に活用されている。
- 特に複数のガスタービンに対して蒸気タービン1台を組み合わせた多軸型(系列)は最低出力が定格の20%と、ガスタービン1台に対して蒸気タービン1台を組み合わせた単軸型よりも出力変動幅を広くとれる点で、出力調整用電源として優れている。
- 現在、変動の大きな再生可能エネルギー電源と組み合わることを想定し、より出力調整特性に優れたガスタービンの技術開発が進められている。
- 例えば GE(ゼネラルエレクトリック)社が 2012年に発表した多軸型の新しいコンバインドサイクル発電機(Flex Efficiency 60)は、起動してから定格出力の30%までに7分、66%までに 10 分、100%までに30 分といった短い起動時間を実現している。
- また最低出力は定格の14%まで下げることができ、離島などにおける風力発電の変動をこれまで以上に吸収することが可能に なる。
- その他の火力発電方式としてガスエンジンがあり、コンバインドサイクル発電よりも負荷追従性能に非常に優れ、数百 MW クラスでは発電出力を10%から90%に上げるのに僅か1分程度と短いため、欧米では風力発電の変動補償を目的として数百 MW クラスのガスエンジン発電設備が設置されてきている。
- フィンランドのバルチラ(Wärtsilä)社は、舶用原動機での経験を活かした大型の高効率ガスエンジンを開発しており、米国では、これを用いた風力発電の変動補償用の 発電所が建設されている。
- なお、ガスエンジンとガスタービンの大きな違いは、ほとんどのガスエンジンではセルモーターでブラックスタート(停電状態からの立ち上げ)が可能である(小さなバッテリーで起動可能) が、ガスタービンは燃焼を開始する前に燃焼用空気を圧縮するためのコンプレッサが必要なため、ブラックスタートにはディーゼルエンジン発電機などの電源が別途必要となる。
- 以上のように火力発電では、出力変化率の大きさが出力調整における重要な要素となるが、その他にも出力調整幅の拡大すなわち最低出力の低減が、いわゆる「下げ代問題」への対応で重要になる。
- 下げ代問題とは、気象条件が良く太陽光発電や風力発電の発電量が増えた時、その増分に相当する火力発電機の出力を絞る必要があるが、各発電機は燃料、方式や機種の違いによって決まる最低出力以下に出力を絞ることはできず、需要が少ない休日、夜間などの軽負荷時に出力調整できない事態に陥ることである。
- この場合、現状では再生可能エネルギー電源側の出力を抑制するしかない。