送配電網の構築と維持は一筋縄ではいかないが、最近欧州で大きな問題となっているのは「ループフロー」という現象である。ドイツからフランスに電力を送る際に、近隣国のベルギーとかに影響が出たりする。
以下、NEDOの「再生可能エネルギー技術白書 第 9 章 系統サポート技術」から転載させて頂く。
再生可能エネルギー電源の導入拡大が進む欧州においては、風力発電の発電電力が、メッシュ状の電力系統において複雑な電力潮流の変動を引き起こす事態が顕在化している。
「欧州送電系統運用者ネットワーク(ENTSO-E)」では、2012年4月25日に、再生可能エネルギー電源の増加により、送電系統内の「ループフロー問題」が顕著になっているとの懸念を表明した。
欧州では、電力システムがメッシュ状に連系されているため連系線の潮流管理が難しく、図に示すように、例えばドイツからフランスに送電する場合でも、フランスに直接送電されるもの以外に、一部は近隣国を迂回して送電されることが発生する。これをループフロー(迂回潮流)と呼んでおり、既にドイツでは再生可能エネルギー電源の出力変動のすべてを自国内で調整できず、その分が流出して近隣国の需給運用に影響を与え始めている。
実際、過去にドイツからベルギーへ連系線を介して風力発電の電力が流入して計画外の潮流が発生し、ベルギー国内の需給運用に影響を及ぼした。そのため、ベルギーでは予防策として4つの移相変圧器を導入し潮流制御を行うことで、計画外潮流の問題を回避している。
移相変圧器の導入により、送電線の長さが変わったのと同じ効果が得られ、ループ潮流が流れ込みにくくなる。
なお、日本ではこの「ループフロー」が起きにくい様に、「焼き鳥」の串の型の構造になっている。すなわち、北海道から九州までの電力網を一本の「串」でさして、北陸と四国はこの串からのブランチとして、電力網同士がループさせない様にしている。