何回か取り上げた「パナソニック」の3,100mAhの18650セルについて、このセル1個が内臓している「11.16 Wh」というエネルギーがどれ位のものかを計算してみる。
筆者は物理屋なので、エネルギーの単位はジュール[ J ]に換算します。
1 Whは3.60 KJに相当するので、
11.16 Wh x 3.60 KJ/Wh = 40.2KJ
(カロリーで計算すると、40.2KJ x 0.232 Cal/J = 9,320 Cal)
じゃぁ、40.2KJというのはどれ位のエネルギーか。
何らかの原因でこのセルの「カソード(陽極)」と「アノード(陰極)」がセル内部で短絡(ショート)し、内部に蓄積されていた40.2KJのエネルギーがすべて「熱」になったと仮定する。その際に温度がどれだけ上昇するかで考えてみる。
この18650のセルの重さは45gであるが、乱暴な計算であるが、約45gのセルがすべて「比熱」が0.4[J/g・K]の鉄でできていたする。
そして、全エネルギーがこの鉄に吸収されるとする。
物質の比熱とは1gあたりの物質の温度を1度あげるのに必要な熱量で下記の式が成り立つ。
熱容量 [ J/K]= 質量 [g] x 比熱 [ J/g・K]
温度上昇分をX[K] とすると、
40,200 [J] / X [K] = (45 [g] x 0.4 [J/g・K])
X [K] = 40,200 [J] / (45 [g] x 0.4 [J/g・K])
X [K] = 2,233 [K]
となり、鉄の温度は2,233℃上昇する計算になる。
鉄の融点は1,535℃なので、セルは完全にドロドロに溶解してしまうことになる。
もちろん、そうなる前に、セルの防爆弁が作動したりすることにより、セルの内部のエネルギーがセルの外に放出されることになるが。(そうすると周りのセルの温度が一気に上がり、発熱・発火の「連鎖反応」を起こすが。)
いずれにしろ、リチウムイオン電池が内部に膨大なエネルギーを含んでいることがよく分かる。