熱輻射で外に捨てる事が可能なエネルギー(ワット)

熱の伝わり方には下記の3つがある。
(1) 熱伝導
(2) 熱対流
(3) 熱輻射(熱放射)
LEDにしろ、LSIチップにしろ、PVパネルにしろ、このどれかまたは組み合わせで熱を外に排出しなければいけない。
「水冷」にでもしない限り、熱は「周囲の空気」に捨てざるをえないので「(1) (空気に対する)熱伝導」と「(3) 熱輻射」に頼る事になる。
「(3) 熱輻射」は周りに空気が無くても「電磁波」として放出されるが、その効果を具体的に考えてみた。

ある物体が輻射により外部に放出するエネルギー(ワット)は、下記のシュテファン・ボルツマンの公式により求められる。
  
  ε2 : 熱源の輻射率
  ε1 : 周りの壁面の輻射率
  σ : シュテファン・ボルツマン定数=5.67×10^-8 [ W m^-2 K^-4]
  Ts : 熱源温度(絶対温度)
  Ta : 外部温度(絶対温度)
  A2:熱源の表面積
  A1:周りの壁面の表面積
A2 << A1の時、すなわち遥か遠くへ熱が広がっていく場合には、A2/A1が限りなくゼロに近くなるため「A2/A1(1/ε1-1)」の項がほぼゼロになり、下記の式で近似出来る。
  
すなわち、輻射で放出出来るエネルギーは、「熱源の面積(A2)」と「熱源の輻射率(ε2)」と「[熱源の温度(Ts)の4乗]と[周りの温度(Ta)の4乗]の」の積に比例する。
仮に、熱源の輻射率がかなり良くて0.9、表面積が10センチ角で10x10 [cm2]= 100x10^-4 [m2]、熱源の温度(絶対温度)を100℃(Ts=373K)、外部温度(絶対温度)を30℃(Ta=303K)としてこの公式に入れ、例によってエクセルで計算すると、
  Q = (5.67×10^-8) x 0.95 x (100 x 10^-4) x (373^4 - 303^4 )
   = 約5.6ワット
となる。う〜〜ん、たったこれだけした周りに放出できない。シュテファン・ボルツマン定数がもともととても小さな数なので仕方ないが。
先日測定したトラックライトは54Wの消費電力であるが、このうち光になったのは恐らく20%で残りの80%(54W x 80%=43.2W)は熱になる。
仮に輻射が良くなる様にアルミナ表面加工して0.9を達成出来たとしても、輻射で処理出来るのは43.2Wのうちわずか5.6Wである。
なお、表面積を4倍(10cm角→20cm角)にすると4倍の熱(=5.6Wx4=22.4W)を放出出来るが20cm角のヒートシンクと言うのはかなり巨大。
あと、「[熱源の温度の4乗]と[周りの温度の4乗]の差」というのがくせ者であるが、これはまた追って。