人体からの熱輻射

「人体表面の熱輻射率は0.95と大変良い」と昨日書いたが、どれ位のエネルギー(ワット)が電磁波として身体から出て行くのか、シュテファン・ボルツマンの公式を使って計算してみた。前回同様「輻射の対象物は遠くにある(A1>>A2)」と仮定して下記の近似式を使う。また体表を覆う物が無く裸で気温10度の寒い中で立っていると仮定。

Q = σ x ε2 x A2 x (Ts^4 - Ta^4)
  σ : シュテファン・ボルツマン定数=5.67×10^-8 [ W m^-2 K^-4]
  ε2 : 熱源(人体表面)の輻射率=0.95
  A2:熱源の表面積(人間の表面積=やせ型で背の高い人の場合)=2 [m^2]
  Ts : 熱源温度(体温を37˚Cとする)=273˚C+37˚C=310[K]
  Ta : 外部温度(仮に10˚Cとする)=273˚C+10˚C=283[K]

これを計算すると、
  Q = (5.67×10^-8) x 0.95 x 2 x (310^4 - 283^4 )
   = (5.67×10^-8) x 0.95 x 2 x (2.8 x 10^9 )
   = 303.9ワット
お〜〜、意外に多い。計算間違いが無いか何回か見直したがあっている模様。
先日のヒートシンクと大きく違うのは表面積で、人間は2m^2だが、ヒートシンクは10cmx10cm(メートルに直すと0.1mx0.1m = 0.01m^2)と200倍違う。
1ワットとは、1秒間に1ジュールのエネルギーが流れる事だから、仮に1時間(60x60=3,600秒) 裸で寒い中に立っていると仮定すると
 303.9 [ジュール/秒] x 3,600 [秒] = 1,094,048 [ジュール]
となり、1ジュールは約4.2カロリーなので
 1,094,048 [ジュール] ÷ 4.2 [カロリー/ジュール] = 261,483 [カロリー]
  = 261 [キロカロリー]
となる。261キロカロリーというと350mlの缶ビール2本分に相当。
なお、人体表面の熱は輻射だけではなく熱伝導でも空気中に伝わって行くがそれは無視している。