熱輻射

熱輻射(熱放射:thermal radiation)について、もう少し詳しく。と言ってもWikiPediaを大幅に参考にさせてもらっているが。WikiPediaでは「熱放射」と書かれているが、ここでは「熱輻射」に表記を変えさせてもらった。)

熱輻射は、熱が電磁波として運ばれる現象。または物体が熱を電磁波として放出する現象をさす。
熱輻射は、輸送元の物体が電磁波を出し、輸送先の物体が吸収することによって熱を運ぶ。この方法だと、二つの物体のあいだに媒介する物質がなく、真空であったとしても熱を伝えることができる。
地球が太陽から熱を得ているのは熱輻射の例である。
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金属を熱すると赤く輝き始める。これは熱せられた物体から赤色の光(電磁波)が出ているのである。赤い光は比較的低温で、物体の温度が上がるにつれて青白い光に変わる。物体から輻射される光のスペクトルは物体の種類と温度によって決まっている。

輻射の効率を現す「熱輻射率」は黒体を1とした時の比率で大体下記となる。
ヒートシンクによく使われるアルミの熱輻射率は0.02-0.1と非常に悪い。しかし、表面を酸化処理して酸化アルミニウム(=アルミナ)にすると0.5程度に向上する。セラミックスの1種である窒化アルミニウムは0.93と非常に良いが、セラミック加工がすごく大変なので一部の会社で研究は進んでいるがまだなかなか実用になっていない。一昨日の記事で輻射率を仮に0.9として計算したが、ヒートシンクとして通常使われる物質で0.9を達成しているものは無い。

  • アルミニウム(Al)    0.02−0.1
  • 酸化アルミニウム(Al2O3) 0.50
  • 窒化アルミニウム(AlN)  0.93  
  • グラファイト(C)     0.71
  • 銅(Cu)         0.10
  • ステンレス       0.31
  • 鉄(酸化面)      0.5-0.9
  • ゴム          0.95
  • セラミック       0.95
  • 人体表面        0.95

人体表面は非常に熱輻射率が高い。人体表面の熱(=細胞の分子・イオン・電子等の運動)が電磁波となって外部に伝わって行く。
空港の入国審査の手前で、熱のある人を調べる為に赤外線温度計(サーモグラフィー装置)で入国者の体温を調べているが、これは顔面から輻射される電磁波(=光)の波長を調べ、そこから体温を計算している(実際には画面上で色で表示される)。
人間の身体から電磁波が出ていると言うのは不思議な感じがするが、物理的には熱=光=電磁波である。
熱は、物質の中では分子・イオン・電子等の運動と等価である。「熱伝導」として外に伝わるときはそのまま運動エネルギーとして伝わる。真空中を伝わるときは上記の様に電磁波として伝わる。電磁波が、照射された対象にぶつかった時点で、再度対象物の構成分子等の運動エネルギーになる。
「光」は人間の眼に見える波長帯域(400nm~700nm)の電磁波を指して言う場合が多い。この波長の光に限定して言う場合は「可視光線」と言った方が良いかもしれないが。