FERCが全米を対象とするエネルギー貯蔵システム向け市場の創設に

FERC(Federal Energy Regulatory Commission:連邦電力規制委員会)は、全米を対象とするエネルギー貯蔵システム向け市場の創設に乗り出した。
FERCは、州間の電力送電や卸売市場を管理しているが、2016年11月17日、各地域の送電機関および独立系統運用機関に対して、エネルギー貯蔵システムが卸売市場に参加するための仕組み作りを行うように要請するルールを提案した。この新しい規制では、エネルギー貯蔵リソースの物理的、運用的な性質を理解することが求められ、従来のグリッドインフラとは異なり、当該リソースが複数の機能を活用して電力の需要側、供給側のどちらにもなることができるような仕組みが必要となる。


この提案が通った場合には、卸売市場においてエネルギー貯蔵システムの役割が飛躍的に拡大することが見込まれ、エネルギー貯蔵システム市場の拡大が期待される。現在のところ、エネルギー貯蔵システムの活用は限定された範囲内に限られている。
PJMのグリッドオペレーターは、周波数調整市場を創設したが、同市場はエネルギー貯蔵システムにとって全米でもっとも大きな市場となった。GTM Researchによると、2013年以降の累計設置量は220.5MWにのぼっている。CAISO(California Independent System Organization:カリフォルニア州の独立系統運用機関)は、「非発電型(non-generator)」という新しいカテゴリを創設し、エネルギー貯蔵システムの市場参加を可能にしている。カリフォルニア州ではエネルギー貯蔵システムの設置が容量にして73.2MWにのぼっており、全米第2位につけている。
ISOとRTO(Regional Transmission Organization:地域送電機関)は全米のおよそ70%にあたる電力網を管轄しており、もしFERCがすべてのISOと RTOに対して同様の政策を採用するよう求めた場合には、エネルギー貯蔵システム市場は全米各地で飛躍的に拡大するものと期待される。
GTM Researchのアナリストは、現在の市場においてエネルギー貯蔵システムは本来持つべき市場参加の権利をまだ付与されていないだけであり、今回の提案はその現実に対してルールを再定義するためのものである、との考えを示している。
今回の提案によって、グリッドオペレーターは既存ルールを調節し、卸売市場においてDER(distributed energy resource:分散電源)が競合できるような仕組みを構築することが求められる。これにより、デマンドレスポンスや電力効率化、エネルギー貯蔵システム、再生可能エネルギーといったDERのポテンシャル拡大につながり、アグリゲーションに注視した事業戦略を掲げる多くの企業にとっては地理的な拡大が期待できるチャンスにつながる。
今回の発表に先立ち、4月には情報提供依頼書が発行されている。官報に本提案書が示されたのち60日間にわたり、利害関係者からのコメントが受け付けられており、委員は集められた情報をもとに再評価を行うこととなる。
これら不確定要素に加えて、来期大統領のDonald Trump氏は1月の就任後に新しく2名の委員を指名することができ、同氏の考えが影響を及ぼす可能性もある。そのため、エネルギー貯蔵システム分野に関心のある者にとっては、今後数カ月は目が離せない状況である。
今回のFERCの提案は、エネルギー貯蔵システムの電力網への組み込みを加速させることにつながる可能性があるが、エネルギー貯蔵システムが具体的にどのように市場に参加していくことになるかは各地域の決定に大きく左右されることになるとみられる。