照明の効率とは(1)

先日、wikipediaから

白色LEDでは、他の照明と違って発光成分のほぼ全てが可視光領域であり紫外や赤外領域には無視できるほどしか発光していないため、電力の変換効率は最大で34%と、蛍光管の25%、白熱電球の10%と比べて効率がかなり良い

と引用したが、もう少し考えてみた。
上記のwikipediaの記事では、「電力の変換効率」の「分子/分母」が何であるか書かれていないが、分母は発光に使った電気エネルギー(ワットかジュール)だろう。
で、分子であるところの「光の出力=明るさ」をどういう尺度で捉えるかが問題になるが、下記の2通りがあると思う。
(A) 物理量(エネルギー:ワットかジュール)として捉える
(B) 測光量(人の目の感じ方)として捉える
上記のwikipediaでは、効率を%で表しているため(A)である。「光の明るさ」を「エネルギー(ワットかジュール)に換算」して割り算し、使ったエネルギーがどれだけ有効に使われたかの比率を計算する。
もう一つの(B)の測光量(人の目の感じ方)を使う場合は、人間の目で見て明るいかどうかの、どちらかというと主観的な感覚を数値で表して用いる。但し、この場合の「効率」は%とはならない。
今日はこの(B)を考えてみたい。
(B)で分子になる「光の明るさ」に何を使うかだが、「光の明るさ」をはかる単位には下記の3種類がある。
(1) 光束(Luminous Flux)

  • 光源からある方向に放射されたすべての光の明るさを表す心理的な物理量
  • 単位 : lm(ルーメン)またはcd・sr(カンデラステラジアン
    • ステラジアンとは球の半径rの平方(=球の半径を1辺とする正方形)と面積が等しい球面上の部分の、中心に対する「立体角」。全球は4πステラジアン(=12.566)に相当する。
    • すなわち、1ルーメンとは、1ステラジアン角あたりに1カンデラの光度があたるだけの光の量

(2) 光度(Luminous Intensity)

(3) 照度(Illuminance)

  • 平面状の物体に照射された光の明るさを表す心理的な物理量
  • 単位面積あたりに照射された光束と等しい
  • 単位 : lx(ルクス)

よく聞く「ルーメン」とか「カンデラ」とか「ルクス」とか言う単位が出て来る。それぞれの定義を数式で確認すると良いのだが、今日はそれは横におきます。
で、一般的に使われる指標は何だろうか? Wikipediaの「発光効率」という項目を見ると、測光量には「全光束」が使われている。ある光源から出る「光束」が全部で幾らかを計算し(測量し)、使ったエネルギー(ワット)で割る。
この際、測光量として使われる全光束は、出て来た光をただ合計するのでは無く、光の放射が人間の視覚に対して与える影響を波長に対する重みづけ(分光視感効率:luminous efficiency function)として加える。
すなわち、白熱電球や蛍光灯では人間の目に見えない紫外線や赤外線を一杯放射しているが、見えない周波数で幾ら発光してもそれは勘定から外す。また、可視波長の光の中でも波長(色)によって人間には見え方が異なるのでそれで重みづけする。右のグラフがその波長による見え方の重みづけ(分光視感効率グラフ)であるが、びっくりするぐらい波長(色)によって差がある。
いわゆる「可視領域」というのは360nm〜830nmの間だが、このグラフを見ると、可視光でも赤色や水色は緑色の1/10くらいの明るさに感じるようである。あくまで人間がそう感じるだけであるが。(虫は紫外線が大好きで、紫外線を一杯出す蛍光灯に集まって来る。)
で、ここで使う「測光量」は出て来た光をそのまま使うのでは無く、人間の視覚に明るいと感じる周波数を、その見え方の重みづけで計算しようと言う事である。
なお、555nm(緑色)の波長が人間に取って一番強く感じるらしいが、この555nmの単一光において1ワットのエネルギーを与えた時に出る光束を683ルーメンと定義しています。(これ、将来のブログで出て来ます。)
この重みづけされた「全光束」を、消費したエネルギーで割ったのが「発光効率(Luminous efficacy)」であり、単位は「ルーメン/ワット(Lm/Watt)」である。
この単位は、使ったエネルギーが有効に使われたか無駄になったかの判定には直接は使えないが、違う照明器具や光源の比較には使える。先ほどのwikipediaから代表的な照明器具の数値を引くと下記の様になる。

蛍光灯

  • 熱陰極型蛍光管 → 40〜110 lm/W

白熱電球

放電ランプ

  • 高圧水銀ランプ → 50 lm/W
  • 高圧ナトリウムランプ → 110〜130 lm/W

発光ダイオード(LED)

  • 擬似白色(青黄色系)LED → 30〜100 lm/W
  • 擬似白色パワーLED → 20〜80 lm/W
  • 高演色性白色LED → 20〜30 lm/W
  • RGB白色LED → 20〜24 lm/W

こうやってみると、LED照明は確かに良いが、そんなに桁外れに良いわけではない。高圧ナトリウムランプなんか、110〜130 lm/Wで、非常に良い。(もっともナトリウムのオレンジ色の単光色であり、トンネルの中はまだしも家の中では使えないが。)
(続く)
なお、今日のブログは、産業技術総合研究所このサイトを参考にしました。