カリフォルニア州でのネットメータリング制度(NEM)の変更

今、米国では住宅向け太陽光発電の売電・買電の仕組みであるネットメータリング(NEM)の制度変更の議論が色々な州で起こっている。
日本ではFITを用いているが、米国ではネットメータリング(NEM)を用いている州が多い。
このネットメータリング(NEM)制度は、良い面も悪い面もあるが、その制度変更をうまくやらないと、折角順調に増えてきたルーフトップソーラーに一気に冷や水をかけることになる。今回のカリフォルニア州の決定は、PV業者にとっては朗報ではあるが、不平等感があるのは否めない。
なお、下記の議論に出てくる「小売レート」はだいたい15-18セント/kWhで、「卸売レート」ははだいたい7~8セント/kWh。

カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)は1月28日、3対2の投票結果によりネットメータリング(NEM)プログラムの後継となるNEM2.0を制定した。
同政策は、ここ10年間にわたり、NEMプログラムに参加する消費者に余剰発電分(上図ではA)を「小売レート」で買取ることを保証し、その結果、同州は全米の他州を上回るルーフソーラーの設置数を達成することができた。
1月28日のこの決定は、予想通り「小売レート」を維持することで決着しソーラー業界の勝利となった。(NEMプログラム参加者側の敗北となったネバダ州やハワイ州の結論とは反対の結果。)
一方電力会社側は、「小売レート」にて買取ることにより、ソーラーを所有しない消費者に不公平に料金が課せられているとして、同レートの削減を要請していた。
委員長のMichael Picker氏が述べるとおり、この新しい制度では、NEMプログラムに参加する消費者の「積極的な」時間帯別料金(TOU: Time-of-use rates)への移行が求められる。TOUでは、時間帯によって異なるレートが課されることとなり、よりリアルタイムの発電・送電コストに見合ったレートとなる。ソーラー業界サイドもこのコンセプトをサポートしてきたが、TOUの導入によりNEMプログラムの経済性の予測が困難になるのではとの懸念もあり、Vote Solar支援グループ長のAdam Browning氏はTOUをより段階的に導入することが望ましいと述べている。
なお、TOUは2020年までに全家庭に導入される予定であり、ソーラー以外の消費者については、2019年ごろからの移行になると見込まれている。
124ページにわたる今回の決議案には、投票の前日に加えられた変更箇所もあり、また、新規のNEMプログラム参加者に課される最低固定料金(non-bypassable charges)は減額されることとなった。
中でも、送電費用が除外されることとなり、これによりルーフトップソーラーシステムを所有する典型的な家庭では、平均で2-3セント/kWhから4-5セント/kWh減額されることとなる。
この点、反対票を投じたCatherine Sandoval委員とMike Florio委員は、すでにソーラー所有者に有利な状況にあるにも関わらず、本来すべての消費者が平等に負担すべき送電コストをさらに除外するという変更を適用するのは行き過ぎであると述べている。
賛成票を投じたのは、Michael Picker委員長の他、Liane Randolph委員とCarla Peterman委員であった。
3名とも、今回の決定は100%満足のいくものではないとの考えを示しており、2019年のデッドラインまでに同州の他の規制を踏まえ、NEMプログラムを再度検討し、価値の適正化を図っていく必要があると述べている。
Picker委員長は、今回の決定では意見が分かれることとなり、とても複雑なものであったが、カリフォルニア州の消費者により多くの選択肢、自主性、そして電力使用制御を付与できる内容となった、と述べた。
電力会社サイドは1月、PG&E社、SDG&E社、SCE社が共同で代替案を提出し、原案よりもレートを引き上げる修正を加えたが、それでも小売レートに比べると著しく低いレベルであった。
また、連邦レベルでは、議会において連邦投資税額控除(Investment Tax Credit)の延長が決定され、想定外の結末となった。
このような状況の中、今回の「小売レート」を維持するという決断に至った。
CPUCはNEMプログラムについて、将来的には、再生可能エネルギーやエネルギー貯蔵などの分散電源を電力会社の投資計画にもりこむ分散電源計画(distribution resources plan: DRP)や、インセンティブや料金制度に分散電源の価値を考慮する分散電源統合計画(integration of distributed energy resources: IDER)等との統合も図っていくことが見込まれる。

PG&E:Pacific Gas & Electric、SDG&E:San Diego Gas & Electric、SCE:Southern California Edison