米政府、2020年までに低所得者層向け住宅へ合計1GWのソーラー設置を目指す

連邦政府は今週、電力効率化と太陽光発電へのアクセス拡大を加速させるイニシアティブを発表した。
比較的金持ち層への屋根上の太陽光発電設置はそれなりに進んだが、これらを推進するためのNEMもITCもその他の補助金も、「金持ち層への優遇(税金をさらに金持ち層へ分配する)」という批判がかなりある。
これらの批判に対応するために、NEMの修正や補助金の削減等は行われているが、同時に低所得者層に対し、電力効率化や太陽光発電への投資のハードルを下げることにより、2020年までに低所得者層向け住宅全体で1GWの太陽光発電の設置を目指すとのこと。
今回のイニシアティブ(Clean Energy Savings for All Initiatives:全国で太陽光発電と電力効率化を推進するイニシアティブ)の中でも重要なのは、戸建住宅向けのPACE(property-assessed clean energy financing:不動産評価クリーンエネルギー)プログラムに関する追加の指針である。PACEプログラムは、水道水や電力使用の効率化や分散型の再生可能エネルギー発電システムに投資した場合に、その費用が固定資産税への優遇によりキャッシュバックされる仕組みであり、融資者と所有者の双方にとって低リスクである他、電力効率化市場をさらに拡大させる可能性が期待される。
現在のところ、住宅向けのPACEプログラムはカリフォルニア州フロリダ州で積極的に展開されている。カリフォルニア州では最大となる$20億の市場を構築しており、二番手のフロリダ州も順調に伸びている。
連邦政府は昨年、住宅向けのPACEプログラムを他の州でも普及させるべく、PACEの先取特権をFHA(Federal Housing Administration:連邦住宅局)の戸建住宅の第一担保付き融資に従属させることとした。FHAはまた、PACEローン付き物件についてFHA保証つきローンで購入しまた借り換えすることが可能となることを発表した。FHAのポートフォリオは昨年、住宅ローンの新規貸出しにおいて、購入では全体の20%、借り換えでは13%を占めている。
今回のイニシアティブにより、低所得者層に対する電力効率化、大陽光発電導入にかかる初期費用へのハードルを下げることができる。また、Renovate America社によると、FHAは公的支援を受けているローンの中でもその融資幅が最も広いため、電力効率化、太陽光発電のアップグレードに対するハードルも低くなるという。
Renovate America社は家庭向けPACEプログラムにおいて75%のシェアを有している。 Renovate America社は今回の好機を活かすべくVivint Solar社と提携することを決定し、Vivint Solar社の顧客向けにRenovate America社のPACEローンプログラムを提供する。Vivint Solar社の担当者は、今回の提携により、太陽光発電がより多くの顧客にとって利用可能なアイテムとなり、従来のローンや電力購入契約、リース契約に関しては初期費用を支出することができない人々にとってもチャンスが生まれる、と述べている。
HUD(U.S. Department of Housing and Urban Development:米住宅都市開発省)によって太陽光発電の利用可能性向上に向けた取り組みはすでに実施されている。HUDはコミュニティーソーラー等も含め、2020年までに300MWの再生可能エネルギー連邦政府補助住宅に導入することを目標としている。今週の発表を受けて、120以上の住宅局と地域の協同組合による電力会社が36州 でコミュニティーソーラー向けに$287Mを投資する見込みである。
GTM Research社によると、現在27州でコミュニティーソーラープロジェクトが展開されており、新たに9州でプロジェクトが計画されている。コミュニティーソーラーは、家を所有しない人や太陽光発電の設置に不向きな住宅にとっては重要なプログラムである。カリフォルニア州ニューヨーク州では、低所得者層がコミュニティーソーラーにより参加しやすいよう取り組みをおこなっており、さらに米エネルギー省はイノベーティブなコミュニティーソーラープロジェクトに対して上限$100,000の補助金を提供している。
とはいうものの、これはなかなか難しいテーマであると、筆者は感じる。