米国電力卸売市場における価格決定メカニズム

自分の為の忘備録の続きです。細かいので、興味の無い人は無視して下さい。

  • 電力卸売市場価格
    • 電力卸売市場価格は、基本的に電力会社による市場への入札に基づき決定される。
    • 同市場は「オークション形式」であり、需給のバランスに基づく「需要曲線(高負荷時ほど取引価格は高くなる)」を基盤に価格が決定され、その価格は「変動費用(燃料費等)」のみを反映したものである。
    • ここで、同レベルの需要を持つ地域内においては、各発電源による出力に応じた「利用可能性(Availability)」が価格を左右する。
    • 例えば一般的に、石炭や天然ガス等の化石燃料は「稼働時間の80%が利用可能」との前提で価格(レート) が算出される。
    • 一方、再生可能エネルギー、特に風力発電の場合は火力に比べて稼働率が低く、「稼働時間の20%を利用可能」として計算される。
      • なお、これらの「稼働率」は米国における一般的な数値であり、地域により異なる。
      • 稼働率は各 ISO や RTO の電力信頼度協議会や NERC(北米電力信頼度協議 会)の承認を受けて決定されている。
    • 仮にオークション取引において価格が$120/MW (日)となった場合、化石燃料発電の場合は$120/MW (日)の 80%を、風力発電ではその20%を回収することとなる。
    • この価格決定メカニズムでは風力発電の取引価格が火力発電等と比較して安くなるため、経済合理性の観点から、風力発電から調達できる容量があれば優先的に取引される仕組みとなっている。
  • 容量市場
    • 一部のRTOやISO では、容量市場(Capacity Market)を運営している。
      • 容量市場を運営しているISO/RTO : PJM、NYISO、ISO-NE
      • 容量市場を運営していないISO/RTO : ERCOT、MISO
  • 投資費用の回収
    • 発電開発事業者は、この(変動費用のみを反映した)卸売り市場の価格メカニズムをもとに、初期投資費用を含む総コストの回収、および収益性を踏まえたうえで、プロ ジェクトの実現可能性を判断する。
    • 風力発電開発事業者は、PTC 等の再生可 能エネルギーに対するインセンティブも加味した上で採算性を決定している。
    • 電力小売市場において利用者から初期投資費用を別途回収できる場合は、これも考慮する。
    • このように開発事業者は、卸売、小売市場において相対的に収益性を分析した上で、事業の実現可能性にかかる意思決定を行う。
  • 市場原理を優先
    • FERCでは、市場原理に基づいた価格決定メカニズムこそが消費者利益と生産者のビジネス機会の双方にとり最善であると考えており、できる限り市場原理を優先するアプローチをとっている。
    • 卸売市場価格(タリフ)は、各 RTO/ISO の信頼度評 議会(Reliability Council)により承認され、さらに FERC がこれを承認する。
    • また、各地の北米電気信頼度協議会(NERC; North American Electric Reliability Corporation) の承認も要求される。