「IV-IV族」

繰り返しになるが「LSIチップ」「太陽光発電パネル」「LED照明」とも半導体が基本的な素子として使われている。
暫く前のブログで、色々な半導体を「バンドギャップ」の大きさ(小さい順)でリストアップした。WikiPediaを参照しているがここに再掲すると、

ゲルマニウム(Ge)    0.67 eV  (IV族)
・窒化インジウム(InN)  0.7 eV  (III-V族)
・シリコン(Si)      1.11 eV  (IV族) → LSIチップ、太陽光発電
・ヒ化ガリウム(GaAs)   1.43 eV  (III-V族)→ LSIチップ、太陽光発電
テルルカドミウム(CdTe) 1.49 eV  (II-VI族) → 太陽光発電(FirstSolar社)
・リン化ガリウム(GaP)  2.26 eV  (III-V族)
・硫化ガリウム(GaS)   2.5 eV
炭化ケイ素(SiC)     2.86 eV  (IV-IV族)
・窒化ガリウム(GaN)   3.4 eV  (III-V族)→ LED
・ダイアモンド(C)    5.5 eV  (IV族)

原子の最外殻は8個の電子を取れるので、周期表も8単位で繰り返すが、その真ん中の「最外殻電子が4個(IV族)」に位置する元素がそもそも半導体として使われた。即ちショックレーらが初めて点接触トランジスタを発明した際に使った「ゲルマニウム(Ge)」や、現在「LSIチップ」「太陽光発電パネル」で一番使われている「シリコン(Si)」である。
「IV族」の左隣の「III族」と右隣の「IV族」を組み合わせた「III-V族」も、その後色々な場所で使われている。LEDで使われているGaNは「III-V族」の典型である。通称「化合物半導体」と言われる。
炭素(C)が基本元素の「ダイヤモンド半導体」はそのバンドギャップの大きさで「夢の半導体」と言われ、幾つかの大学で積極的に研究されている。筆者の友人も某社の中央研究所から某大学に移ってこの「夢の半導体」の研究を行っている。この話はまた追って。(いつの事やら...)
さて、今日の話題は「IV族」同士を組み合わせた「炭化ケイ素(SiC)」である。最近色々な所で聞く様になった。「ダイヤモンドの弟分」、あるいは「ダイヤモンド(C)とシリコン(Si)の"あいのこ"的な性質」を持ち、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れる。
SiCはSiに比べ、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界が約10倍、電子飽和速度が約2倍、熱伝導度が約3倍という優れた物性値を有している。
絶縁破壊電界が高い為に、高速ショットキーバリアダイオードMOSFET(電界効果トランジスタ)に用いられる。インバーターには高圧の電流が流れるため、絶縁破壊電界が高い素子が必要になる。シリコン製ではあっという間に壊れてしまう。
最近CREE社が発表した高耐圧ダイオードはなんと1,700Vに耐えられる。太陽光発電所や風力発電所の1,000Vを越す大型インバーターへの採用が期待されている。
バンドギャップが大きい事を使って青色発光ダイオード(LED)にも使われる。CREE社は1990年にこのSiCを使って世界で最初の青色発光ダイオード(LED)の量産販売を始めた(月産100万個)。ただし、発光効率は後に一般的となるGaNに比べて悪い(照明目的には十分な明るさではないが、カラーディスプレイ等の表示目的には十分な明るさ)。また価格も高くなる為、GaNを発光層に使うLEDの量産化が可能になってからは使われなくなって行った。
SiCはサファイアに比べて10倍熱伝導度が高いため放熱が容易であり、また絶縁体であるサファイアに比べて電気導伝性がある(基板から電極を取れる)ため、今でも「基板」として使われている。
(なお「サファイア基板+GaN発光層」を使って日亜化学工業社が青色LEDを量産発売したのは1993年である。)
(多分)続く