香港のホテルで、On Demand Movieがタダだったので、2008年に一度見たPixar製作の「WALL-E」を久々に観た。筆者はこれまで数百本の映画を見ているが(飛行機の中が多い)、「WALL-E」は間違いなくベスト5に入る。もしまだ観ていない人がいたら、是非DVDを買うか借りて観て下さい。損はしません。
あらすじは:
- ゴミだらけになった地球を見捨てて宇宙空間で700年間生活している人類
- 残された地球をひたすら掃除しているロボットのWALL-E
- その後、宇宙空間の人類から派遣されたロボット(EVE)が現れて....
今回2年ぶりに観て、再度感激しました。
WALL-Eについて書いているこのWikipedia(日本語はこちら)は良くかけているので、既にこの映画を観た人は是非目を通して下さい。もしまだ観ていない人はまず観てから。
さて、地球の汚れかたは半端じゃなくて700年間掃除しても奇麗にならない。建物、高速道路、宣伝用パネル、家が無惨に放置されている。WALL-Eは、朝から晩まで片付けに励むが、エネルギーが無くなると太陽光パネルを時々胸から出して自分で電池を充電する。
ということで、今日のトピックスは太陽光パネルの安全性についてです。(何と長い前置きか!)
一時シリコンの値段が高くなった時に、シリコンを少ししか使わない「薄膜」がはやった。その後、薄膜では発電効率が上がらない、時間の経過とともに発電効率が落ちていく、シリコンの値段が安くなった、等で薄膜離れが起こり、今の時点では結晶系が圧倒的に多いです。その薄膜系で頑張っており、出荷量で世界首位になっているのがアメリカに本社のあるFirst Solarという会社である。この会社は、CdTe(Cadmium Telluride)というII-VI族半導体の結晶をガラス基板の上を成長させ、安い値段とそこそこの発電効率を維持している。
さて、問題はCdTeである。このCdTeのうち、カドミウムは非常に毒性の強い元素である。特に日本人には強烈な悪印象がある。メーカーは、「両面をガラスで覆っており漏れることはない」と主張する。多分普通に使っている時はそうであろう。ただ、もし、大規模発電施設や、地域一帯にこのパネルを使っている住宅地で火事等が起きてパネルが焼けガラスが溶けて土壌にしみ込んだらどうなるだろうか?何らかの理由で産業廃棄物としてどこかに大量に捨てられたらどうだろうか?(パネルの寿命は普通20年なので、20年後に確実にゴミになる) WALL-Eが活躍する700年後はどうだろう?
ヨーロッパ主導の「RoHS指令」で鉛等の危険物質が電気機器から使われなくなり、廃棄時の環境へのインパクトがすくなくなった。また、ハンダづけ時に作業員が鉛の蒸気を吸い込む事も無くなった。
カドミウムもRoHS指令で制限されているが100ppm以下と割と緩い。
以下は、Wikipediaのカドミウムの項よりの抜粋。
欧州では、カドミウムの人体への蓄積を防ぐため、カドミウムを含む製品の製造・輸入に関してRoHSとして知られる厳しい制限を課している。2001年、ソニー・コンピュータエンタテインメントは、オランダ政府より、ゲーム機PS oneの周辺機器から基準値を超えるカドミウムを検出したとして対応策を求められた。配線の赤いビニール被覆の顔料にカドミウムが用いられていたのが原因である。ソニー・コンピュータエンタテインメントは欧州全域で100億円以上の費用を投入し、製品の回収と対策品の置き換えを余儀なくされた。
この事は、世界の電機部品メーカーに強いショックを与え、工業製品の生産現場からカドミウム離れが起こった。
前後して市販の二次電池も負極に水酸化カドミウムCd(OH)2を使用するニッケル・カドミウム蓄電池(いわゆるニッカド電池)からより大容量かつカドミウムを使わないニッケル・水素蓄電池・リチウムイオン二次電池への転換が進められている。
いずれにしろ、ミイラ取りがミイラにならない様に(ちょっと違うかな?)、クリーンテクノロジーのはずが実は環境破壊を増長しない様に。
ところで、WALL-Eは太陽光発電と電池で動きますが、EVEは内部にとんでもなく優秀なエネルギー源を持っているようです。
阪口幸雄