先日、こちらの記事で、Utility(発電所)むけの蓄電池として用いられているナトリウム硫黄(NAS)電池の事を書きましたが、産業技術総合研究所の資料によっかかって、その長所・短所を纏めます。
- 長所
- 従来のLead-acid batteries(鉛蓄電池)に比べて体積・重量が3分の1程度とコンパクトなため、需要地の近辺に設置できる。
- 構成材料が資源的に豊富
- 長寿命
- 自己放電が少ない
- 充放電の効率が高い
- 短所・課題等
- 常温では動作しないため、ヒーターによる加熱と放電時の発熱を用いて、作動温度域(300℃程度)に温度を維持する必要がある(←これが一番の問題)
- 充放電特性が比較的長い時間率(6〜7時間) で設計されている。
- 一定期間内に満充電リセットの必要がある。
Utility(発電所)むけの蓄電池としては、ほかにも、フローバッテリーとかが提案されています。フローバッテリーは、イオンの酸化還元反応を溶液のポンプ循環によって進行させて、充電と放電を行います。重量エネルギー密度が20Wh/kg程度と低く、リチウムイオン二次電池の1/5程度に過ぎない。このため小型化には向きません。しかし、サイクル寿命が1万回以上と長く、実用上10年以上利用できるそうです。さらに構造が単純で大型化に適するため、1000kW級の電力用設備として実用化されています。右の写真は、VRB Power Systems(2009年1月にPrudent Energy社に買収された)のVanadiumベースのフローバッテリー。オーストラリアのKing Islandにある風力発電所のピーク時の電力を、風のない時に備えて数時間貯えておけるそうです。
オバマ大統領が訪れたこの工場も、フローバッテリーです。(Vanadiumバナジウムではなく、Zinc bromide亜鉛臭素)
また、最近GE(General Electric)が、Utility向けのギガワット級の蓄電として、Durathon Batteryと言うのを発表しました。GEが2007年に買収したBeta R&Dという会社の技術をベースにしているようです。上記のNAS電池と違って、高温に温める必要は無いという事です。(詳細は追って)
太陽光発電、太陽熱発電、風力発電とも、自然状況によって大きく発電量がかわります。だからこそ「自然の恵みを受けた再生可能なエネルギー」なんですが、これらの蓄電技術によって平準化してこそ、私たちは大きく寄りかかれると思います。
3週間ほど前にシリコンバレーがやたら暑かった日がありました。「クーラーを入れたいな〜」と思いましたが我慢していましたが、5時ごろ停電になってしまい、夜中の2時まで回復しませんでした。「Utility Lebelレベルでの蓄電が無いとこういう時にひとたまりも無いな」と思ったと同時に「自宅にUPSがあれば、数時間はCable ModemとWireless Routerが使えたのにな〜」と思った次第です。(まあ、急ぎの用事がなかったので、さっさと寝てしまいましたが。ガスはちゃんと来てたので、シャワーは浴びました。1989年のサンフランシスコ大地震の時は電気もガスも水も止まって大変でした。)