トヨタは、2050年にかけて売り出す新車の大体の比率を下記のように想定しているらしい。
「トヨタ環境チャレンジ2050」の6つのチャレンジと実現に向けた当面の主な取り組み
- 新車CO2ゼロチャレンジ
- 2050年グローバル新車平均走行時CO2排出量を90%削減(2010年比)
なるほどとは思うし、筆者の住んでいるカリフォルニアでの施策(2050年のGHG排出量を1990比で80%カット)ともほぼリンクが取れている。
2050年は35年も先で、筆者がまだ生きているかどうかは疑問だが。
温暖化ガス(GHG)の発生を80%カットできるのは画期的である。
販売車両の100%をZEV車(電気自動車、プラグイン車、FC車を含む)にするのは、正直言って2050年でも難しいとは思うが、普通のハイブリッド車も含むなら十分可能な目標である。
まあ問題は普通のハイブリッド車(プラグインの出来無い)の比率をどこまで下げられるかであろう。
普通のハイブリッド車なら、1kWh程度のバッテリーを積めば良いので、バッテリーコストを抑える事が可能で(モーター他が追加になるのでコストと重量は増える)、燃費も大幅に向上する。
排気ガス(二酸化炭素等のGHG)を排出するが、2050年には、触媒技術やエンジンの熱効率は画期的に良くなっているとは思うが。
当面の主な取り組み・目標
FCVが一般的になるかどうかは恐らくトヨタ自身も自信がないのであろう。
燃料多様化への対応
(1) 電気利用促進への取り組み
- ハイブリッド技術は、電池・モーターなど各種次世代車開発に必要な要素技術を含んでおりプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、FCVなどへの展開が可能なコア技術。
- トヨタは、ハイブリッド技術を核に、様々な次世代車の開発を推進。
- 将来の次世代車開発では、電動化技術のレベルアップが重要。
- PHVのEVモードやEVの航続距離の拡大に向けて、エネルギー密度が高く、高電圧化が容易で、高温耐久性に優れる特性を持つ全固体電池など、次世代電池の開発を推進。
- SiCパワー半導体の開発を推進し、HVの燃費10%向上への寄与を目指すとともに、HV・PHVなどの電力を制御するパワーコントロールユニット(PCU)の高性能化・小型化を推進。
「電気利用促進への取り組み」に関する上記の目標は極めて妥当だと思う。
- 過去の「技術開発+実用化+量産化」には、最低でも10年(どうかすると20年)かかっているが、上記でトヨタが述べている技術は並行して開発可能な技術ばかりで、かつ基礎的な技術開発の目処はついているものばかりだと思うので、2035年〜2050年を考えれば、十分実現可能かと思う。
- 次世代電池
- 「エネルギー密度が高く、高電圧化が容易で、高温耐久性に優れる特性を持つ次世代電池」
- 『全固体電池』という言葉がこういう正式な発表の場所で出てきた。感慨深い。トヨタは、『全固体電池』を次世代電池の筆頭においており、かなり前からずっと研究開発を続けている。出している特許の数も半端ではない。既に実用化(量産時の安定性とコストと寿命)にかなり目処をつけたからこういうところで書いたのであろう。
- 『全固体電池』で注目のベンチャー企業(?)のSEEOは、Samsung主導で$17Mの資金調達を昨年12月に成功させた後に、最近ヨーロッパの会社(Bosch)が買っちゃったが...... 他にも注目の会社はいろいろあるが、トヨタは自分で頑張っている。原理自身は単純だし。問題は電解質の素材と製造(量産)方法と寿命とコスト。 SEEOの様にRole to Roleにするのかな?
- 「リチウムイオン電池」や「ニッケル水素電池」は、2040年(25年後)には駆逐されているのであろうか。「車載」に限定すれば、恐らく「YES」であろう。
- リチウムイオン電池の実用化年を「1991年」とすると、既に24年経っている事になる。(旭化成の吉野彰らが基本概念を確立したのは1985年なのでそこからなら30年経過。)
- 「SiCパワー半導体」
- 今回の第4世代のプリウスで期待されたが、値段の問題か性能・品質の問題か搭載されなかった。
- 次世代かレクサスバージョンのどれかの車で採用されるのだろうか...
- ちなみに、下の写真がSiCを使ったPCUユニットと、それを搭載したカムリの実験車両。
(2) 「水素社会」実現に向けた取り組み
- 2014年12月にいち早く日本で販売を開始したFCV「MIRAI」は、米国・欧州でも販売を開始。
- 「水素社会」の実現に向け、FCVが役割を果たしていくためには、2020年代に本格的な普及期に入ることが必要であると考えており、2020年頃以降は、グローバルで少なくとも2017年の生産規模の一桁増(10倍)となる年間3万台以上の販売を目指す。
- 他地域に先駆けMIRAIを発売した日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に普及に弾みがつくと考えており、2020年頃以降は、少なくとも月販1,000台レベル、年間では1万数千台程度の販売を目指し、「水素社会」の実現に向け貢献を図る。
- FCバスは、2016年度中に東京都を中心に導入を開始し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け100台以上を目途に準備を推進。
- 大幅な販売増に向けて、生産技術の革新など生産体制の強化と商品の拡充を図るとともに、各国・各地域の政府や水素インフラ会社などと協力して、水素ステーションの整備に向けた取り組みを推進。
- 燃料電池関連の特許実施権(約5,680件。2014年12月末)の無償提供、自動車メーカーによる水素ステーション整備促進に向けた支援策推進など、FCV普及促進の取り組みを実施。
- 製造段階でのCO2排出が少ない低炭素水素の活用に向けて、トヨタグループ各社で連携するとともに、水素インフラ会社などと協力しながら、将来の実用化・活用促進に向けて、様々な実証実験を推進。
片や、「水素社会」に関しては、『技術』の側面よりも、『社会インフラ』の側面のほうがはるかに強い。
『技術』の代表格は、「いかに触媒に白金を使わないか」に尽きると筆者は思っている。
「水素脆化」や「圧縮水素(70MPa=700気圧)」や「液化水素」はややこしい問題ではあるが、これはなんとかなるであろう。
(水素が液体になる融点はマイナス260度)
また、ガソリンの消費が減れば減るほど、ガソリンの精製に使っていた大量の水素が余るので、水素の日本国内での製造には大きな問題はないと思うが、やはり水素ステーションの建設と維持の問題が大きいだろう(鶏が先か卵が先か)。