CIGS方式のMiaSole社がダウンラウンドで資金調達

CIGS方式の太陽光発電パネルメーカーのMiaSole社が、ダウンラウンド(前回より株価が下がる状態)ながら$106M資金調達したとのこと。
CIGSとはCopper Indium Gallium Selenideを用いる薄膜方式。薄膜系で辛うじて残っているのが、First Solar社が使うCdTe方式と、このCIGS方式。
MiaSole社のウエブサイトのニュースリリースによると、昨年(2010年)の12月に、量産レベルのモジュールで15.7%の発電効率を達成。これは自社比ではなく、DOEのNational Renewable Energy Laboratory (NREL) が計って公式に認めた数字との事。
下の写真はMiaSole社のカリフォルニアの工場での製造風景。

モノシリコンに比べたらまだ少し悪いがポリシリコンに比べたら遜色の無い数字だと思う。これを、結晶シリコンを使わずにあくまで薄膜プロセスの廉価な原価で達成したとの事。
他のスタートアップ企業とちがって、MaiSole社は既に量産設置がスタートしている。(まだ量は少なく2010年実績で30MW程度。出荷中のモジュールの発電効率は10%~13%程度。)
ドイツのJuwi Solar社との契約とか、Chevron、ProLogis、Phoenix Solarとかとも契約も結ばれている模様。
この会社の特徴的な技術は、薄いスチール箔の上にCIGS層をスパッタリングする技術。この工程はポテトチップの袋の裏の銀色のコーティングと同じらしい。なかなか面白い。ロールに巻かれたスチールから順繰りにスパッタリングをして別なロールに巻いて行く。
なお、15.7%(2010年12月認定)のモジュールの出荷は、ULとIECの認可を2011年の前半に受けてからになるのでまだ先になる模様。まずは、その前(2010年9月)にNRELから14.3%の認定を受けてULとIECの認可を取ったモジュールの出荷が先行する。なお、2012年の売上予想が$413Mである。
で、資金調達であるが、ダウジョーンズのこの資料によると、

  • これまでシリーズA~Eで$350Mを調達済み
    • ここまでの出資者は、Kleiner Perkins Caulfield & Byers, VantagePoint Venture Partners, Firelake Capital Management, Passport Capital, Arcelor Mittal, Ecofin and Voyageur Mutual Funds
  • 前回のシリーズEは、
    • 2008年7月に実施
    • 増資前の時価総額が$1,200M($12.4 a share)
    • Seligman Communications and Information Fund他が出資
  • 今回はシリーズF
    • $106M調達(したらしい。正式発表無し。$125Mと書いてあるところもある。)
    • この資金で量産設備の増強を行い、2011年後半のIPOの準備資金にする
    • 増資前の時価総額が$550M($4.33 a share)で前回の半分以下

う〜〜ん、ダウンラウンドは大変だが(これまでの出資者にとって希釈化が進む。どういう「ラチェット条項」になっていたのだろうか?)、それでも発電効率の改善の為のR&Dが進み、新規プロジェクト(顧客)が付き、増資による増産設備が整うのは僥倖である。
うまくIPOが出来ればそれでまた資金が調達出来、さらに量産設備を増強出来、ポジティブスパイラルに入っていける。
前回、比較的良い条件で資金調達した2008年というのは、シリコンの値段が異常に高くなり、シリコン結晶を使っているメーカーの製造原価が跳ね上がり、薄膜系がもてはやされた時期に相当する。
5日前に取り上げたSuniva社が、結晶シリコンを使ってモジュールレベルで16%なので、それと同等の発電効率になる。
Suniva社は「シリコン結晶」への「イオンインプラ」、MiaSole社は「薄いスチール」への「薄膜スパッタリング」。いずれも半導体で何十年も使われて来たテクノロジーではあるが。
なお、CIGSは日本ではソーラーフロンティア社(昭和シェル石油の子会社)が採用。