太陽光パネルのモジュール生産性の向上

昨日取り上げた「Solar Industry」でもう一つ面白いと思った記事は「自動化によるモジュール生産性の向上(Further Automation, Improved Encapsulants Re-Shape Module Assembly)」。
モジュールは、1枚あたり200ワット程度の発電能力を持つが、大体下記のプロセスで組み立てられる。(結晶シリコンの場合です。薄膜の場合は異なります。)
(1)完成して検査されたセル(1枚が15cm角位)を縦方向に10~12枚程度繋ぎ合わせ結線する
(2)それを、幅方向に5~8組程度組み合わせる(合計で80~100枚程度になる)
(3)表面に保護ガラスをつける
(4)強度を維持して屋根にマウントする為の金属フレームをつける
(5)隣のモジュールとの接続用の箱を裏につける
セルは、半導体プロセスとほぼ同じで、シリコンウエハ上に各種の化学的プロセスを積み重ねて行くが(結晶シリコン系の場合)、モジュールの製造は機械的な加工プロセスとかハンダ付けとかが多い。また、サイズが大きくなるので(1.2m x 1.5mとかが多い)、重いガラスとか最終製品をハンドルする設備も必要になって来る。
セルの製造装置(前行程プロセス)は1台数億円し、クリーンルームも必要で設備投資額は大きくなるが、モジュール製造にはそこまでの初期投資は要らない。
太陽光パネルメーカーと言っても、セルだけ製造している所、セルは買って来てモジュールの組立を行う所、両方行う所と色々ある。
中国メーカーのSuntech社のモジュール製造能力は、過去10年間で10MWから1,800MWに拡大し、今年末(2011)には2,400MWになるそうである。Suntech社はこちらの記事にあるように、アメリカ国内にもモジュール組立工場を作っている。この記事の太陽光発電施設では、合計で80万枚必要なので、これを中国からコンテナ船+トラックで持って来るとそれだけで膨大な輸送費がかかる。
さて、この記事によると、

  1. Suntechの中国の工場でも、作業員の労賃最低賃金の上昇もあり、自動化が進みだした
  2. ハンダ付けの精度とスピードをあげる為に色々な装置が提案されている
  3. 現在のセルのハンダ付けのスピードは1時間あたり2,400枚であるが、これが2,800~3,000程度になるであろう
  4. どんどん薄くなっているセルや、バックコンタクトの取り扱いが必要
  5. ラミネーション用の素材は、いままではSilicon Liquidを使っていたが、気泡が入り長期の信頼性に欠ける。このため、最近はEVA(Poly Ethylene Co-Vinyl Acetate)を使うことが増えて来たが、EVAシートも均一性が問題になっている
  6. モジュールメーカーが25年保証を行う為には、製造工程と使うマテリアルの向上が欠かせない
  7. 装置による自動化と、人手による作業はどちらが良いと一概に言えず、それぞれの工場によってトレードオフが色々ある
  8. 気泡とか、マイクロクラックとか、バックシートの不完全なシーリングとかの不良モードを一つづつ潰して行かなければいけない
  9. 歩留まりと生産性の両立が大事
  10. 出荷検査が通るというのと、25年間動作し続けるというのは違う

とのこと。中国メーカーはとにかく数を沢山出しているので、このあたりのノウハウも大分蓄積している模様。
下図は、私がパワーポイントで作ったのであまり正確ではありません!!