「熱を電気に変換する」を考える

昨日の話の続きです。
ここ最近「クリーンテックというのは結局何をやっているのかなぁ」と自問しています。
答えは出ないが「産業革命以来200年間常識になっていたエネルギー作成や消費形態を見直す事かなぁ」と思いつつある。
まあ、エネルギーには限らないが、筆者が興味を持って色々勉強しているのは大体下記の5つのジャンル。
(1)「光」→「電気」

  • 太陽光パネルによる発電
  • 光起電力効果(Photovoltaic effect)を利用
  • 電子のバンドギャップを光のエネルギーで励起して発電するP/N接合型ダイオード(LEDの逆)

(2)「熱」→「電気」

  • 熱から電気を発生する火力発電も原子力発電もこのカテゴリーに入る(高温で高圧のスチームでタービンを廻し発電)
  • 再生可能エネルギとしては太陽熱発電とかが一般的
  • 太陽熱発電には更に下記の3種類あり
  • 発電効率悪く、装置が大掛かりで大幅なコストダウンは難しいと言われる

(3)「電気」→「光」

  • LED照明です
  • 色々な方式はあるが、基本はP/N接合部付近にて禁制帯を越えて電子と正孔が再結合する時に、禁制帯幅にほぼ相当するエネルギーが光として放出される現象を利用(Photovoltaicの逆)
  • まだまだ効率が悪く、熱に弱いとか、高いとか問題あり

(4)「酸素+水素」→「電気」

  • Fuel Cell発電です(日本では燃料電池というが電池じゃ無い)

(5)「風」→「電気」

  • 風力発電です
  • アメリカやヨーロッパでは一番信頼の於ける再生可能エネルギになりつつある
  • 最近は1基で5~7メガワット発電出来る巨大な風車もある

(6)「電気」を貯める

  • フロー電池とかで数百メガワットを数時間貯められれば...

(クリーンテックの分野としては、ほかにも、潮力発電とか電気自動車とかバイオ燃料とか水処理とか人工光合成とか色々あるが、ごめんなさい、浅学なので横に置きます....)
去年の暮れにスターリングエンジン方式の太陽熱発電が頓挫というニュースを聞いてから、(2)のカテゴリーの「熱を電気に変換する」という事はどういうことなのかをいろいろ考えている。
他の(1)(3)(4)(5)(6)の方式では副産物として「熱」が出ることがあるが(大体邪魔者だが)、熱が直接発電に絡むのはこの(2)だけ。
さて、筆者の知識の範囲では「熱」から「電気」を発生出来るのは下記の3方式。
(A)高温で高圧のスチームでタービンを廻し発電

  • 産業革命以来のやりかた(ワットが蒸気機関を改良したのは1785年)
  • 膨大な熱が無駄になる

(B)スターリングエンジンを使って、高温の熱源と低温の熱源のエネルギー差でピストンを動かし発電

  • カルノーサイクルに沿って動くので理論的には極めて高効率のはず
  • しかし、熱源がもつ熱エネルギーを生かせていない
  • 例えば、工場とかの廃熱をダクトで引っ張って来ても、その廃熱の持つ熱エネルギーを生かしきる前に次々新しい熱風がやってくる→結果多くの熱が無駄になる

(C)熱電変換素子(Thermoelectric conversion element)を利用

  • ゼーベック効果を利用(ペルチェ効果の逆)
    • ゼーベック効果とは、2種類の異種金属(または半導体)の両端を接続し、その両端に温度差を設けると起電力が発生する現象
  • 活用例としては原子力電池がある
    • Pioneer 10/11、Voyager 1/2、GalileoCassiniとかの宇宙探査機で利用されている(木星を超えたあたりで、太陽からの光が弱くなり太陽光パネルでの発電が出来なくなるため)
    • プルトニウム原子核崩壊によって生じる熱と宇宙空間の温度差を用いる
    • 上記の宇宙探査機では30年とかの長期間に渡って数十〜数百ワットの電力を発電し続けている
  • 下の写真は1977年に打ち上げられ今は海王星も通り過ぎ太陽系を離脱したVoyager2であるが、左に伸びている腕に3つ原子力電池(radioisotope thermoelectric generator (RTG))が連結して装備されている(今も稼働して地球に電波を送って来ており、2030年まで通信が続くと考えられている)


この原子力電池の中にはプルトニウムと「熱電変換素子」が入っている。
ということで、「熱電変換素子」について考えてみたい。
(つづく)

阪口幸雄