カリフォルニアの水事情

水の話が続きます。

シリコンバレーに住んでいると、冬(12月〜3月)は雨がしとしと降るのですが、4月位から11月位まではぱったりと雨が降らなくなります。(今年は5月位まで雨が続いた「異常気象」でした。)
それはそれで過ごし易いのですが、その間の「水」が心配になります。
シリコンバレーの町中では、雨の降らない春から秋の間でも、家々の芝生はいつも緑で、緑豊かな木が生えていて、街路にはきれいな花が咲いています。これらの緑は、全て水をじゃんじゃかスプリンクラーで撒いた結果です。
これらの水は、シェラネバダ山脈カリフォルニア州ネバダ州の間の山脈)の雪解け水を、えっちらおっちら何百キロも太平洋岸まで引っ張って来たものです。

シリコンバレーから、シェラネバダ山脈にあるタホ湖やヨセミテ国立公園の方に車で行くと、途中で幾つもの水路に出会います。この水路をきれいな水が滔々と流れています。これが実はカリフォルニアの太平洋岸の諸都市の生命線です。また、シェラネバダ山脈と太平洋岸の間に広がる農業地帯であるCentral Valley(右の写真)の灌漑用水もここから取っています。

私がアメリカに来た1985年当時は、冬にはちゃんと雨が降っていたのですが、暫くしてから「干ばつ(drought)」が続きました。冬に雨が降らないのです。また、シエラネバダ山脈に雪が降らないのです。

最初の2〜3年は、貯水池の水とかでやりくりしていたようですが、そのうち貯水池もみるみる水が減っていって、底が見える様になって来て、「う〜〜ん、こりゃたいへんだ〜」と思う様になりました。「庭に水をやるな、プールは禁止、車は洗うな」とかいうおふれが出て。前の年に比べて余計に水を使った家庭にはペナルティーで水道代がべらぼうに高くなったりしました。(これも、メーターのある町だけ。メーターの無い町は把握のしようがない。)

幸いこのDroughtは7年(!)ほどで終わりましたが、ここ3年ほど、カリフォルニア州はまた雨が降らなくなっています。(前のDroughtほどでは無いかな〜、と町に住んでいる私などは思いますが、農業に従事している人は大変なようです。今年の長雨は少しは役に立ったのかな?)

日本では、梅雨と台風と冬の雪でかなりの水を得て、山がある程度スポンジの様にそれを吸収します。しかし、田んぼを水を長時間貯える構造にし、かなりの溜め池を各地に作り、細かい配水構造と畦を作りと、巧く自然と調和して生きて来たのも事実です。鎌倉時代から室町時代をへて江戸時代にかけて、各地で気の遠くなるような水との「共存」努力がなされたのでしょう。(明治時代以降は、「その上に胡座をかいて」と言う気がしてなりませんが....)

川が急流で海に一気に注ぐ日本の自然状況を考えると、これらの先人の知恵に頭が下がります。穀倉地帯と言われる地域の実りは、1,000年以上の自然との戦いの上での実りであります。

さて、日本よりも面積の広いカリフォルニア州での昨今の状況は、なんと言ったら良いのかよく分かりませんが、ある意味「人間が生きて行ける国土を努力して作る」という概念では、共通する物があると思います。

ただ、人間の努力には限界があるのも事実で、自然を畏れ、敬い、努力を重ねる必要はいずこでもあります。