カリフォルニア州では「デマンドレスポンス」は今ひとつ盛り上がっていない。
理由はいろいろあるが、筆者が感じる理由は
(1)そもそも発電リソースが余っている(「今時点では」という注釈付きで)
(2)そのため、面倒くさいてコストがかかるデマンドレスポンスを真面目にやりたくない
である。
そうは言うものの、今後
(3)ガス火力発電所が順番に止まっていく(OTCの発電所はさようなら)
(4)再生可能エネルギー発電が増えて行く(2030年で50%です!!)
(5)上記より、ガバナーフリーの同期型の発電施設が減り、インバーターを介する非同期型の発電が劇的に増える
という背景のもと、CPUC(California Public Utilities Commission: カリフォルニア州公共事業委員会)は8月30日、同州のデマンドレスポンスに対して大幅な変更を加える計画を発表した。
同計画では、2018年までに化石燃料をリソースとする発電をデマンドレスポンスの対象外とすること、また2010年代中に現在の電力会社主導モデルから、第三者事業者に開かれた市場モデルに変更すること、が提起されている。
カリフォルニア州では、電力会社が個々のプログラムにおいてデマンドレスポンスを完全にコントロールしており、パフォーマンスが悪いことから長年にわたってその改善策が検討されてきた。CPUCは昨年より対策を講じており、現在のところ、電力会社に対しては第三者からのデマンドレスポンス調達義務やDRAM(Demand Response Auction Mechanism)の開始を義務付けている。そして今回新たな計画の提起を行ったのである。
今回の提案においては、何百MWもの従来型のデマンドレスポンスを新しいデマンドレスポンスに置き換えるという点や、様々な新しいリソースを受け入れる点では、今後の同様案件に対するモデルとして示すことができる可能性がある。新しいリソースとしては、スマートサーモスタットや、建物管理の自動化、需要家側設置のバッテリー、PEV(プラグイン電気自動車)等がある。
GTM Research社のアナリストElta Kolo氏は、今後デマンドレスポンスプログラムにおいては電力会社の役割が小さくなり、第三者が台頭していくであろうと見込んでいる。また、今回のCPUCの提案について以下3つの特徴を挙げている。
⑴ 化石燃料をリソースとするバックアップ発電の撤廃
CPUCは、2017年末までに、ディーゼルや天然ガス、石油、プロパン等の化石燃料をリソースとするバックアップ発電を禁止したい考えである。カリフォルニア州のSGIP(Self-Generation Incentive Program: 自家発電インセンティブプログラム)が改訂され、天然ガス火力や化石燃料をリソースとする発電、熱電併給システムは同プログラムより除外されることとなった。今回の提案はこのSGIPと足並みを揃える内容となっている。
⑵ 第三者間の競争
今回の提案では、より応答の早いデマンドレスポンスを確立すること、容量およびアンシラリーサービスにおいて将来的に必要とされる要件をクリアすること、を実現するために、新しいモデルを構築することが求められており、市場主導型、競争的で技術面でのバリアがないデマンドレスポンスが期待されている。電力会社は2016年末までに2018年のデマンドレスポンスポートフォリオを提出することが要求されるとみられ、CPUCは同ポートフォリオの改善策を2017年秋頃に発行する予定である。
⑶ 電力会社の役割の変化
デマンドレスポンスが開始された当初は、市場での経験が豊富な電力会社が中心的役割を果たす事が自然であった。CAISOや第三者のベンダーの中には電力会社の関与を排除することを求める意見もあるが、CPUCは、電力会社のコントロールを全て排除してしまうのはまだ段階として早すぎる、との見解を示している。CPUCは、市場主導型のデマンドレスポンスに変換するにあたっては、電力会社と第三者プロバイダーとの間で公正な競争が行われるように取り組んでいくことが大事であり、その結果として、電力会社の役割等は自然とある方向に向かっていくであろう、との考えを示している。