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[社説]入国規制の緩和は踏み込みが足りない
「鎖国政策」と揶揄(やゆ)された従来の規制に比べれば前進だが、緩和に伴って面倒な手続きが新たに導入されたこともあり、実際の人の往来がどこまで増えるかはなお不透明だ。他の主要国にはない日本特有の仕組みもあり、世界標準からほど遠い。
変異ウイルスなどへの備えは必要だとしても、往来再開に動きつつある国際社会に足並みを合わせ、日本政府も「開国」に向けてさらに踏み込むときだ。
目玉は待機期間の最短3日間への短縮だが、そのためには煩雑な手続きが要る。ワクチン接種証明などに加え、入国後4日目から10日目までの「特定行動」期間の活動計画書を事前に監督官庁に提出し、承認を得る必要がある。
その期間中は通勤電車は利用できず、職場では個室環境のできる限りの確保が求められ、一緒に飲食した人は全員10日間の健康観察をしないといけない。
さらに帰国者の属する企業などが「受入責任者」を決め、到着空港での出迎えをはじめ、その人の行動を監視する必要がある。
もともと日本の水際規制は入国者に空港で抗原検査を実施するなど厳しい独自の措置を採用しており、これは今後も継続する。一方、欧米各国ではワクチン接種やPCR検査の陰性証明があれば、隔離や待機なしで入国を認めるのが標準的な形になりつつある。タイのように観光客の受け入れを再開する国も現れた。
入国制限の緩和と言いつつ、いたずらに手続きを複雑化したり、提出書類を増やしたりするようでは、実質的な緩和とは言えず、日本と世界の往来は増えない。
慎重さは大切だが、科学的エビデンスに基づき、「ゼロリスク神話」に陥ることなく、防疫と開国を両立させる道を探ってほしい。1日当たりの入国者数の制限も段階的に緩和すべきである。