風車の回転領域を通り過ぎる空気の重さ

(下記も物理屋の独り言なので、興味の無い方は無視してください。)
風力発電量は風速の3乗に比例すると数回前に書いたが、空気の重さについて。
WikiPediaによると、

  • 乾燥した空気1Lの重さは、セ氏0度、1気圧(1 atm)のときに1.293 gである。
  • 1Lで1 gというと一見小さいようであるが、垂直に数十kmも積み重なることで、地表付近の空気には大きな重さ(圧力)がかかる。
  • 1気圧は1.033kgf/cm2なので、地表では1 cm2あたりおよそ1 kgの圧力が加わっていることになる。
  • なお、風速、つまり空気の移動速度が大きくなるにつれ、衝突する空気の総量が増え、大きな風圧が生じることになる。
  • 帆船、ヨット、ウィンドサーフィンなどはこれを利用して大きな推力を得ているわけであるし、台風などでは巨大な破壊力となる。
  • また、空気は流体であり、空気の中を進む物体には揚力や抗力(空気抵抗)が生じる。鳥や飛行機の翼は大きな揚力を得ることで空気中を飛揚する。


右の写真は、シーメンス社の2.3MWの風力発電装置。ローター部の直径113m。風受け面積が10,000m2。
秒速10mの風が吹いたとして、1秒間に通り過ぎる空気の体積は10,000m2 x 10m = 100,000m3
上記より1Lあたりの空気の重さは1.293g/L、1m3は1Lの1,000倍なので、1m3の空気の重さは1.293g/L x 1,000L/m3 = 1.293kg/m3
100,000m3の空気の重さは、100,000m3 x 1.293kg/m3 = 129,300kg
お〜、かなりの重さになる。ほぼ130t。
もちろん、風車の回転に寄与するbladeの面積はずっと小さいので、実際に回転に寄与する空気の重量はもっとずっと小さいが。
なお、この1秒間に通り過ぎる空気の中に含まれる水分を計算してみる。
30˚Cに於ける飽和水蒸気量が30.3g/m3なので、湿度を仮に50%とすると、100,000m3 x 30.3g/m3 x 50% = 1,515,000g
水蒸気だけで1.5tとなる。
ちなみにこの風車、永久磁石のダイレクトドライブ方式。ナセル部の全重量が73t、ローター部の全重量が66.7t(軽い!)。
ブレードの長さは55m、素材は「ガラス繊維強化エポキシ樹脂」で、各ブレードは一体成型で「継ぎ目無し」だそうです。