カロリーと熱の定義

数日前に熱力学上のカロリーと栄養学上のカロリーについて書いたが色々考えてみた。
例えば水は栄養学上のカロリーはゼロである。しかし、例えば冷蔵庫で5度に冷やした水を500 ml飲むとする。この水が消化吸収されずに37度の温度で排泄されたとする。すなわち体内を通る事で5度が37度に暖かくなった。水にとって、体内を通る事によって増えた熱力学上の熱量は
(37˚C - 5˚C) x 500 cc = 32˚C x 500 cc = 16,000カロリー
となる。
この水は元々20˚Cの水道の水だったとすると、冷蔵庫に入れた瞬間に冷蔵庫の庫内温度が上がり冷蔵庫は一所懸命冷やして庫内温度を5˚Cに戻そうとする。すなわち冷蔵庫は庫内温度を冷やす為に(電気)エネルギーを使い、庫内の空気が水から熱量を奪い冷やす。
この際に水から奪った熱量(水が与えた熱量)は
(20˚C - 5˚C) x 500 cc = 15˚C x 500 cc = 7,500カロリー
である。
話が変わって、筆者はスチームサウナが好きである。スチームサウナ→水風呂→スチームサウナ→水風呂→を5回ほど繰り返すと身体がすっきりする。このスチームサウナの室内には身体に浴びる為の水が用意されているが誰も使わないと(冷たい水を補給しないと)この水がどんどん熱くなる。すなわちスチームサウナの室内の空気(と水蒸気)の「熱(=分子の運動エネルギー)」から熱伝導・熱対流を経てもともと20˚Cだった水が50˚とか60˚とかに熱くなる。
20˚Cの水道の水が熱いのか冷たいのかはあくまで周りの環境による。周りが冷たければ水が持っていた熱量(水分子の運動エネルギー)を周り(空気や水蒸気)に放出し、周りが熱ければ周りから熱量を受け取る。
栄養学上の熱量はあくまで人間の身体がその物質を消化吸収出来るかどうかにかかっている。
ゼロカロリーのコーラは、おそらく人工甘味料とかで甘みとか味とかを付けているのであろうが、人間の身体がこの人工甘味料を吸収しないのであれば栄養学上の熱量はあくまでゼロであろう。
振り返って考えると、熱力学上の「熱」とは2つの物質間のエネルギーの移行の「過程」であろう。特別の事をしなくても、より温度の高いものから低いものに自然にエネルギーが移るというのは「熱力学第二法則」に則っている。
数日前に書き並べた「熱」の定義をもう一度書いてみると、

  • (熱は)エネルギーの1つの形態である
  • 高温の物体から低温の物体に移動するエネルギーを「熱」という。
  • 熱とは、熱伝導または熱放射によるエネルギー伝達の過程の間だけ定義されるものである。
  • 温度の異なる物体から物体への自発的なエネルギーの流れを「熱」と呼ぶ。
  • 物質の中のエネルギーは、分子や原子の運動エネルギーによるものである。運動エネルギーと熱は形式的には等しいかもしれないが、同一ではない。
  • 熱力学的には、熱は物体内に蓄えられるものではない。仕事と同様、それはある物体から別の物体へ(熱力学用語では、系とその外界の間で)の「エネルギーの移動」としてのみ存在する。熱の形で系にエネルギーを加えると、その系内に蓄えられるエネルギーはもはや熱ではなく、系を構成する原子や分子の運動エネルギーまたは位置エネルギーの形をとる。

う〜〜ん、少し分かった様な気がするがまだまだ直感的に分からない。もっと考えてみよう。
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と、上記は今朝時差ぼけで眠れずに(台北のホテルの)ベッドで寝返りをうっていたときに考えて書いた事であるが、その後もうちょっと考えた。
結局、「水」という物質そのものには「熱量」は無い。「水」は石油や天然ガスの様に燃えて周りの物資を暖めたりとか出来ない。
周りの環境と温度差があった場合に始めて熱量のやり取りがあり、一見「水」に熱量がある様に見えるだけであると思う。
これは、物質そのものに熱量がある「材料」とは違う。例えば、発電で用いられる一次原料の天然ガスは1Kgあたり53Mジュールの「燃焼発熱量」を持つと言われるが、水にはこんな芸当は出来ない。
即ち、水は何も「燃焼成分」を含まないので「燃焼発熱量」は限りなくゼロである。
もっとも、「水」を電気分解(2H2O-> 2H2 + O2)して出来る「水素」は酸素と結合する事で非常に大きなエネルギーを発する事が出来るが、水素は水の構成物質ではあるが、電気分解の結果「水では無くなった」ので「水がどれだけの熱量を肘しているか」とかの議論とは一線を引くべきであろう。
カロリーゼロとかのコーラは、その溶かし込んでいる「人工甘味料」とかに何かしらの「燃焼発熱量」があると思われるので、その物質の「温度」に関わらず「熱量」があるのだろう。すなわち、下記の3種類の熱量が考えられる。
(1) 物質のもつ「燃焼発熱量」(燃える物質に限る)
(2) 物質のもつ「温度」による熱量(基本的に分子の運動エネルギー。絶対零度(0K)でない限り何かしら分子が運動しているはず)
(3) 栄養学的にみた「熱量」(人体がこの物質を熱量として吸収出来なければゼロとなる)
ますますこんがらがって来たかな?