昨日のアリゾナ州フェニックスの大型太陽光発電プラントの話から脱線します。
今回の発電所の建設予定地の地図(右に再掲:Sempra Generation社のサイトにあるオリジナルはこちら)を見ていると、右上にNuclear Generation Station(原子力発電所)があります。(右上の茶色の台形の部分。Google Mapでこの場所を見ても、ちゃんとブラインドして隠してあった。太陽光パネルを敷き詰めるのは黄色の線でかこったエリア。)
ここに原子力発電所があるから、高圧送電線が来ている訳ですが、この原子力発電所を調べてみたら幾つか興味深い点があったので、下記します。
名称:The Palo Verde Nuclear Generating Station
規模
- 平均3.2 gigawatts (GW)(これはUSで最大)
- 1.27 GWの発電能力を有するリアクターが3基
- 400万人分の電力
- アリゾナ州での発電総量の35%に相当
- 3基は独立稼働出来る様に設計(施設は共用せず独立にそれぞれが持っている)
供給先
冷却水
- 冷却水として使える水源(川とか湖とか海)に面していない世界で唯一の原子力発電所
- 近くの都市部(フェニックス)の下水を再処理して冷却水として利用(76,000,000 m³/年)
- 発電所で使った廃水はさらに処理して貯水池(写真の右上)に貯める
建設費
- 建設に12年かかり1988年から稼働開始
- 総建設費は$5.9 Billion (=4,838億円)
- 3.2 GWで割ると、$1.84/W
発電コスト
- 2002年時点のOperating Costは1.33 cents/KWh (燃料とメンテナンス)
- これは同時点の石炭(2.26 cents/kW·h) 天然ガス (4.54 cents/kW·h)より安いが、水力 (0.63 cents/kW·h)よりは高い
- なお、こういう時の発電コストの計算には建設コストを含まないが、仮にこの原子力発電所が60年間使われたとして償却費を計算すると1.4 cents/kWhとなるらしい。上記のOperating Cost($1.33/KWh)とあわせると2.5 cents/kW·hとなる。(筆者の住んでいる地域の電気代は12 cents/KWh)
送電
- 隣接する500 kVの変電所(switchyard)はUSの西部地域の変電/送電の重要な拠点になっている
- 下記の電力会社へPath 46という高圧線で送電
- ロスアンジェルス地域:Southern California Edison
- サンディエゴ地域:San Diego Gas & Electric
- 3基のリアクターのうち2基が同時に停止しても両地域に送電出来る様な設計
安全
- 1988年の稼働以来、大きなトラブルも無く22年間稼働を続けているらしい(細かい事故とか故障はいろいろあったようだが)
- 非常に強固な安全設計がなされているそうですが、外部からの攻撃の危険性のある施設のリストのトップにも入っているらしい
- 冷戦時にはソ連からの攻撃を、イラク戦争時にはテロリストからの攻撃を想定した防御態勢をとっていた模様
詳細はこちら。