=脱炭素の話(10)=

(1) 米国で1年間に消費されるエネルギーは107 EJ(エクサ ジュール)であるが、1時間あたりに太陽から地球に届くエネルギー量は620 EJ。
(2) 年間では、620EJ x 365日 x 24時間 = 5,431,200 EJのエネルギーが降り注いでいる。
(3) この巨大なエネルギーは空気や地面や海面を温めて、風や海流や生物の営みを作り出しているが、最終的にどこに行くのか。
(4) もしこのエネルギーが地球内に留まると、地球はあっという間に爆発する。
(5) ということで、常時、同じ量のエネルギーが、輻射熱として宇宙空間に放出されている。
(6) 化石燃料というのは、数億年の遥か昔に、太陽エネルギーが炭化水素という形態で一時的に保存されているものだと言える。
(7) エネルギーはある面極めて豊富で、しかし活用が難しいものだと言える。
(8) 添付の図は、NESAが発表している地球に降り注ぐエネルギーの収支(WikiPedia Japanより借用)。
(9) この図を見ると「反射」で宇宙に跳ね返されるエネルギーが30%。大気・雲により吸収された後で宇宙空間に輻射されるエネルギーが19%。両方合わせて約半分の49%。
(10) 一度地球(地面/海水)に熱として吸収された後で宇宙空間に輻射されるものが51%で残り半分。

 

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=脱炭素の話(9)=


数日前に投稿した「米国のエネルギーの流れ」に前後を追加してみた。
(1) 全体の消費エネルギー(107 EJ)のうち化石燃料は86 EJであるが、これは数億年前に光合成により成長した植物が地中に埋もれ炭化水素となったものである。
  光合成:CO2+太陽光→C+O2
  炭化水素:C + H → CnHm (メタンCH4, エタンC2H6等)
(2) 107 EJの一次エネルギーは、電力に変換されたりそのまま利用されたりするが、2/3(72 EJ)は無駄になっており、それらの無駄はほとんど排熱となる。
(3) 活用される1/3のエネルギー(35EJ)は、運動エネルギー・熱エネルギー・位置エネルギー・光エネルギー等になるが、最終的にはやはり熱エネルギーとなる
(4) 例えば、電力がLED照明に使われても、それらは最終的に電源回路や空気や照射対象を温める事になり、分子の熱運動に変わる。
(5) ということは、入力エネルギー(107 EJ)は活用されようが無駄に捨てられようが、最終的には等価の熱に変わる。
(6) そしてこれらの熱エネルギー(107 EJ)は、海洋・空気・地球を温めるか、宇宙空間に輻射熱として放出される。
(7) う〜〜ん、何が言いたいのかわからなくなってきた(笑)。
ーーーーーーー
以下単位系についての補足。
(1) エネルギーの単位を米国のエネルギー省が使う「Quad」から、物理屋にとって馴染みのある「EJ=Exa Joules」に変更。
(2) Quadは10の15乗、Exaは10の18乗。
(3) 米国では、Quad BTUのことをQuadと略して表記することが多い。
(4) 1 BTUとは、米国でよく使うエネルギーの単位で、1ガロンの水を華氏で1度上げるのに必要な熱量。
(5) 1 BTU = 1,055 Joules = 0.25 kcal。
(6) 1 Quad = 1.055 EJとなり、ほぼ同じと考えても良い。
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以上、物理屋の独り言でした。

 

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=脱炭素の話(8)=

しつこく続きます。
最初の図は、全米のガス火力発電所のCapacity Factor(設備使用率)の推移。  (←発電効率では無いです)
(1) Combined Cycleは平均で50%程度だが、徐々に増える傾向にある。夏場は需要が増えるので高くなる。
(2) 反対に、Combustion Turbineは、ピーク時にしかお呼びがかからないので、平均で10%以下。暑い夏はお呼びがかかることが増えるがそれでも10%を超える程度。こういうピーク時にのみ稼働する火力発電所アメリカではPeakerと呼ぶ。
ただ、今後再エネが増えると小刻みな需給調整が大事になってくるので、Peakerの出番が増える。
(3) Steam Turbineは古いテクノロジーでここ20年間は新規設置はほとんど無いが、古い設備はまだ生き残って稼働している。

2番目の全米地図は、これらの3つのタイプ「Combined Cycle」と「Combustion Turbine」と「Steam Turbine」のガス火力発電所の所在地を示す。全米に満遍なく散らばっている。
でも、カリフォルニア州を除く西半分の州は、ガス火力発電所がほとんど無いんだね〜
(これらの州は、主に石炭火力発電と水力発電です。)

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PGE社が新たなデマンドレスポンスの実証プログラム「Smart Grid Test Bed」を開始

オレゴン州のユーティリティ企業であるPGE(Portland General Electric)社は、同社管轄地域の3つの地区で実施する複数年のパイロットプロジェクト、「Smart Grid Test Bed」を開始すると発表した。

当該プロジェクトには、2万人以上の顧客がデマンドレスポンスやスマートホームインセンティブプログラムに参加する。当該プロジェクトのエリア内に住む居住者は、すでに「Peak Time Rebates」に参加している。

Peak Time Rebatesとは、電力負荷がピークの時間帯から他の時間帯に電力使用をシフトした消費者に対して報酬を与えるデマンドレスポスプログラムである。PGE社は当該プロジェクトの期間中に複数のプログラムを試行し、多様な顧客ニーズに対応するため、どのようなプログラムを構築すべきか調査するとともに、自動制御技術を用いて、どうやって利便性の高いプログラムとするかを分析する

https://www.portlandgeneral.com/our-company/news-room/news-releases/2019/07-15-2019-portland-general-electrics-ambitious-smart-grid-test-bed-launches

情報交換会

昨晩は、米国でソーラー関連のビジネスで苦労(!?)している6人が集まって、あれこれ情報交換。
(1) 電力会社向けのソーラーは、PPA価格が安くなりすぎて...
(2) C&I向けソーラーは、時間がかかるわりにリスクが高くって....
(3) 家庭向けは論外.....
と、前向きな良い議論ができました(笑)。
一次会の日本食では、焼酎のボトルが2本空いて、さらにビアハウス(Micro Brewery)へ移動。
出来立て生ビールをあれこれ。

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=脱炭素の話(7)=


下図は、過去18年間のカリフォルニア州の発電施設の設置容量(GW)の推移。
ガス火力が圧倒的に多く、2018年時点で40GWが設置されている。
このうち約20GWがOTC対策で2029年に向かって閉鎖されていく。
再エネ(ソーラーと風力)の設置容量は増えてきているが、設備稼働率が低いので、発電量(GWh)としてはまだまだ少ない。
まあ、ガス火力でも、発電効率の良いCombined Cycleの稼働率は高いが、Combustion Turbineはピーク時にのみお呼びがかかるので、年稼働率は10%以下である。

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=脱炭素の話(6)=


脱炭素の鍵となる火力発電所の状況のおさらい。
このEIAのグラフは、全米の過去の新規設置発電所の年代別の発電種類を表す。
1975年ぐらいに最初の山があるが、この時代は、石炭火力発電所が多い。
1990年代に入り、電力自由化に伴う収益の悪化を恐れて、新規の発電所設置は激減し、1999年はほぼゼロ。
電力会社は自社保有の火力発電所を売却させられ、これらを買い取ったファンドやIPP等にその経営が委ねられる。
2000年にカリフォルニア州電力危機が起こり、電気代は高騰、停電が頻発、PG&E等は経営破綻。
カリフォルニア州は自由化政策を巻き戻し、容量支払い等を保証することで、新規設置を促し一気に新規火力発電所が増える。
この2000年以降の新規設置はガス火力発電所が多い。
ちなみに、カリフォルニア州はその後2010年ごろより再生可能エネルギー発電にシフト。風力発電太陽光発電の大型調達を開始。電力が余り出す。2000年以降に作った火力発電所の事業者は、当然更新されると思っていた10年のPPA契約が更新されない等、混乱に拍車を掛ける。
ということで、今は2019年。
カリフォルニア州のピーク電力需要は40GW程度だが、州内の発電所の設置容量は62GWである(変動する風力、ソーラー等の再エネを除いた)。
今時点では十分余裕があるように見えるが、これからOTCの20GWを2029年に向かって撤退させていくので実はギリギリの状況である。

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